
江戸のメディア王・蔦屋重三郎に出会う展覧会とは?
東京国立博物館で開催された特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」に行ってきました。大河ドラマ『べらぼう』の放送にあわせて企画された本展は、江戸時代に出版業を通じて文化とエンタメを生み出した蔦屋重三郎の生涯とビジネス戦略を紹介するもの。江戸の街並みを再現した展示空間の中で、重三郎が仕掛けたコンテンツビジネスの巧みさを体感できます。

展示の流れと会場の雰囲気
展示の最後には「江戸のまち」を再現した巨大なセット。大河ドラマ『べらぼう』で使用されたロケセットをそのまま活用しており、まるでタイムスリップしたかのような没入感があります。展示は、重三郎の人となりから始まり、出版にかける思い、手掛けた浮世絵や書物、そして江戸の情報流通の革新にまで及びます。江戸時代の一大メディアプラットフォームとしての「蔦屋」を体験できる流れです。


心に残る珠玉の作品たち
展覧会の中でも、特に印象的だった作品をいくつかご紹介します。
平賀源内作「エレキテル」
江戸の発明家・平賀源内(1728〜1780)が再現したとされる「エレキテル」は、静電気を発生させる装置です。西洋の科学技術を日本に紹介しようとした姿勢は、当時の人々にとってまさに最先端。蔦屋重三郎とも交流があり、出版を通じて源内の知識や思想が江戸の庶民に広がっていったことが展示からもよく伝わってきます。
喜多川歌麿「婦女人相十品(ふじょにんそうじっぽん)」
美人画の名手・喜多川歌麿(1753?〜1806)による代表作「婦女人相十品」は、蔦屋重三郎の支援を受けて刊行された連作です。従来の美人画が表面的な美しさにとどまっていたのに対し、歌麿は女性の内面や感情を描き出すことに挑戦しました。情緒豊かな表現は、今なお鑑賞者の心を惹きつけます。
東洲斎写楽「三世大谷鬼次の江戸兵衛」
わずか10ヶ月ほどの活動期間ながら強烈な印象を残した浮世絵師・東洲斎写楽(活動:1794〜1795)。その代表作のひとつ「三世大谷鬼次の江戸兵衛」は、歌舞伎役者の個性と迫力を大胆に表現した一枚です。写楽を世に送り出したのもまた蔦屋重三郎であり、彼の鋭いプロデュース力が感じられます。
洒落本・黄表紙シリーズ
「仕懸文庫」は、江戸時代に流行した洒落本・黄表紙という娯楽文学の代表的なシリーズ。ユーモアと風刺を織り交ぜた内容は、庶民の笑いと共感を呼びました。出版を通じて日常のなかにエンターテインメントを届けた蔦屋重三郎の功績が、このシリーズからもよく分かります。現代でいえばコラムやマンガに近い存在で、江戸の読書文化を体感できます。吹き出し表現は現在の漫画に通じるものがあります。

東京国立博物館の魅力
東京国立博物館は、日本最古の博物館として明治5年に創設されました。上野恩賜公園内に位置し、重要文化財や国宝を含む圧倒的な所蔵品を誇ります。特別展はもちろん、常設展も充実しており、国宝級の仏像や書画などが日常的に見られるのはここならでは。ミュージアムショップでは蔦屋関連のオリジナルグッズも販売されていて、お土産選びも楽しい時間になります。


まとめ:江戸の出版革命を現代に感じる、特別な一日
本展は、単なる歴史展示にとどまらず、現代のメディアやビジネスに通じる多くのヒントを与えてくれる体験型の展示会でした。蔦屋重三郎という人物を通じて、江戸という時代の情報発信力の高さや、人々の文化への欲求を感じることができます。今後の展示にもぜひ足を運びたくなる、そんな一日になりました。

東京国立博物館へのアクセス方法
東京国立博物館は、東京都台東区の上野恩賜公園内にあります。アクセスも良好で、以下の最寄り駅から徒歩圏内です。
- JR「上野駅」公園口より徒歩10分
- 東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」より徒歩15分
- 京成線「京成上野駅」より徒歩15分
上野周辺の観光スポットも楽しもう
博物館の見学後は、上野公園周辺を散策するのもおすすめ。国立西洋美術館、上野動物園、東京藝術大学美術館などが徒歩圏内にあり、一日中アートとカルチャーを楽しめるエリアです。さらに、アメ横での買い物や、不忍池の自然にも癒されます。
アート好きなあなたにとって、まさに「アート旅」のハブとなる上野。次の休日は、博物館巡りや美術館巡りを計画してみませんか?
